swan
mizunomadoka
私は隣のベッドの由香さんをみつめる。
窓際で由香さんのシロツメクサのパジャマが
かすかに上下している。
外を眺めたまま眠ってしまったのかもしれない。
そう思って、ほっと息を吐く。
眠れないのは、薬が多すぎるのかもしれない。
「薬が多すぎるのよ」
由香さんはカプセルや錠剤を窓から投げて
「これって私が地球にお薬をあげたことになるんじゃない?」
と下の芝生を見ている。
「なるかもしれないですねー」
「けっこう本気なんだけどなー」
静かに夜が深くなっていく。
気がつけば由香さんの寝音がきこえない。
どちらかが死んでしまったのかもしれない。
指は、動く。
首も、大丈夫。
目を開けてみる。ああ、私は死んでないや。
パタパタと足音が近づいてきて
子供の問いかける声がする。
「眠りつづけるひとと、眠れないひとは、どっちが人間に近いの?」
私はその子をみつめる。
私は人間のつもりなんだけどなー