越境
小川 葉

 
 
どうぶつは
おとなになってもなく

うれしいときも
かなしいときも

ここにいるよと
いってるみたいに

にんげんはどうだろう

ためしにないてみると
どうしても
なみだがでてしまう

+

ことばが
わたしをおいこしていく

なんどもおいつき
おいこされ
わたしはまだ
だまっている

ひとびとは
さっていき

あなたが
まっていてくれたので

ことばは
もういらなかった

+

まちじゅうを
さがしていた

それは
しあわせなのか
ふしあわせなのか
かくしょうもなく

ただひっそりと
わたしを
まっていた

りくつよりも
うつくしい
あるがままの
わたしのかぞくが

+

きょうあるものが
あすはない

きょうないものが
あすはある
のかもしれない

くれては
のぼる
おひさまをみて

あることを
おもっている

あるひ
あるわたしが
ここにあることを

+

やまにかこまれて
うまれそだったので
やまのむこうには
きのうと
あしたがあるのでした

ようじがあって
やまのむこうにいくひとが
まいとしいるのですが
きのうとあしたを
ちょうせいしに
かれらはいくのだと
おもうのでした

そうして
やまにかこまれたこのちには
ことしもこがねいろの
いねがみのります

やまのむこうから
もどらない
ひともいるのですが

きっといまも
みちにまよいながら
きょうがきょうであることを
ちょうせいしてくれているのだと

そうおもいながら
やまのむこうをみつめ
はははきょうも
いのるのでした
 
 


自由詩 越境 Copyright 小川 葉 2010-05-02 19:49:14
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