りゅうぐうのつかい
春日線香

りゅうぐうのつかいを飲んでしまった
寒天のようだったから つい
つるつると飲みこんでしまった
せっかく遠いところから来てくれたのに
まさか飲んでしまうとは と
母屋の人たちは驚いている
わたしも驚いている
とにかく体に水を足してやらなければいけない気がして
泉に行くと
ちょうど牛や馬を殺しているところで
あんな水 飲めやしない
あわてふためいて畑の裏にまわると
こちらは女学生が列を組んで
行く手を遮っている
ああもう終わりだ
じわりじわりと包囲を狭められて
捕まったら 祭りの席に出されるのだ
さあ みなさま
これがくだんのばか者でございます
どうぞご覧になってください
当一座の目玉でございます
そうして見世物にされて
畳いちまいほどの広さの檻に入れられたまま
海に沈められてしまう
海の底で千年も反省したら
千匹のりゅうぐうのつかいになって
漁師に釣り上げられるのだ
りゅうぐうのつかいを飲んでしまったばかりに
こんな悲しいことになるなんて
ばかだなあ
水が飲みたいなあ


自由詩 りゅうぐうのつかい Copyright 春日線香 2010-05-02 00:20:46
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