世界の果て
たもつ
世界の果てに
ベッドがひとつ
ぽつんとある
父が横になっている
わがままばかり言って困る、と
母から連絡を受けた僕が
その隣に立って
父を怒鳴りつけている
親に向かってその口のきき方は何だ
父は僕を殴ろうとする
けれど拳を握ることはできないし
たとえ握ることができたとしても
それが届くことは無い
ということを知りながら
父も僕もお互いを怒鳴り続けている
やがて疲れてしまったのか
父は冷静さを取り戻し
明日も仕事があるから帰りなさい
と穏やかな口調で言う
深夜二時、世界の果てが
いつもの静けさを取り戻す
明日も仕事があるから
僕には言い訳がある
でも父と母には
言い訳が無い