つづら
春日線香

おおきなつづらを背負っている
つづらを背負って鳥居をくぐる
そこにまっ黒い小坊主が寄ってきて
その中には割れた茶碗が入っているんだろう
ぎっしり詰まっているんだろう
と にやにや笑いながら言う
にやにやにやにや笑っている
わたしはかちんときて
そんなに言うんなら見せてやるよ
と つづらを地面に置く
すると小坊主は慌てて逃げていく
ふん あんな小坊主
どうということはないのだ
しかしそういえば この中身はなんだろう
わたしも知らない
知らないものを背負ってきたと考えると癪で
くやしくてくやしくて
けれども このつづらは開かない
内側からぎゅっと押さえられているのだ
わたしはつづらを背負いなおして
暗くなるばかりの道を急いだ


自由詩 つづら Copyright 春日線香 2010-04-30 01:51:47
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