プロレスとうちゃん
板谷みきょう

初めてプロレスを見に行ったのは
小学生の低学年の頃だと思う。
今はもう無いけれど
中島スポーツセンターに
とうさんが連れてってくれた。

三人兄弟だったのに
ボクだけを連れていってくれた。

会場の二階の一番後ろの席だったから
小さく人が揉み合っているようにしか
見えなかったけど
あの蒸し返した混雑の中で
ジャイアント馬場とか
フレッドブラッシーとか
ボボブラジルとか
テレビでしか見たことの無いレスラーを
見ることができたんだ。

学校で自慢したけれども
同じ組の大友君が見に行ってたらしくて
恥ずかしくなった記憶が
思い出と一緒に湧き出してくる。

「それなら、僕も兄ちゃんと
パパに連れてって貰ったよ。
板谷クンは、何番目の席に居たの?
暴れながら出てくる時、怖かったよね。」

ボクは二階席だと言えなかった。

暫くすると中島公園には相撲巡業があって
汗だくの名前の解からない力士達が
泥で汚れた白いまわし姿で涼んでいた

大友君は
プロレスも相撲も見に行けてたようだ。

あれから四十年以上経って
大友君とも、もう会えなくなってるけど
ボクは父と同様にプロレス好きになっている。

ただ
父と違うのは、恥ずかしい思いを
引きずりながら
未だに
プロレスを見ることだ



自由詩 プロレスとうちゃん Copyright 板谷みきょう 2010-04-29 23:24:38
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