動物園
たもつ

 
 
買ってきた水槽を膝に抱えて
ひとり部屋に座っている
金魚を入れたかったのに
家のどこを探しても
見つからない

代わりに大切なものを入れようとするけれど
透きとおって中身が見えてしまうし
大切ではないものを入れるには
水槽はあまりに狭すぎる

途方にくれて
会いたい人の名前をひとつずつ
口にしてみる
今となっては実際にいた人たちなのかも
よくわからない

近所のバス停にバスがとまり
動物園からの帰り道のようにはしゃぐ
子どもの笑い声が聞こえてくる
本当に動物園に行って来たのかもしれない
 
 


自由詩 動物園 Copyright たもつ 2010-04-29 22:11:33
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