春のウツ
within

逃げ惑う足首に
絡みつく春の鬱
転ばないように地面を
踏みしめているのに
白い鬱が生えてくる

小さな芽が双葉を広げようと
隣で眠る鬱に声を掛けた

まだ孤独であるうちに
秘密の儀式を行う
見つかってしまえば
繕ってきた仮面も
崩れて
溶けて
流れ落ちてしまう

だんしんぐ
だんしんぐ

20℃の境界に照らされて
いつの間にか
空が透けている
風の音も厳しさを失い
遠ざかる切先が懐かしい

少しの欲望に駆られる
鍋で煮えたぎる湯が
注がれる
誰も起きてこない朝に
こっそりと
ふたを開ける


自由詩 春のウツ Copyright within 2010-04-29 16:08:00
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