その・
鵜飼千代子

           その

           せんじょうを 
           ゆるやかにたどる

           双葉にゆるりと
           人さし指をひとつたて
           なかさかよかなぁか と
           呪文をつぶやいて
           みたり

           なかったことを
           逢って欲しいのだと
           裁判所付き添い婦が
           たとえ
           地面に膝をつき
           空に手ひろげ
           願ったのだとしても

           そのお楽しみを
           妨げることだけが
           心のシコり 
           で

           大切なものを
           おざなりに
           涙して みたり

           親切心はその哀しみを
           知るよしも 
           なく

           荒野を
           ざわざがと ゆねが
           はばう
           その

           さる
           山の猿の
           どんな 永久のいとなみも

           キャミソール
           ドレスの

           時間給の営みに勝ることは なく

           申は笑う
           猿は笑う

           さるは 
           わら う

           さらさらさらさら

           さみしく
           やさしく
           くりすちゃんの さるが

           抱きあいながら
           ほんのり
           目尻を輝かせ

           わら う
           笑う

           さらさらと
           さらさ ら 

           と 




       1999.07.12.  YIB01036 Tamami Moegi. 
       初出 NIFTY SERVE FPOEM
       詩集 ブルーウォーター 所収


自由詩 その・ Copyright 鵜飼千代子 2010-04-28 21:57:15
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