坊ちゃん
吉岡ペペロ

生まれてこの方甘やかされて育てられてきたから
苦労という苦労をしたことがない
ややこしいことに巻き込まれることはあっても
いつもかならず着地だけはうまくゆく
だからひとの心だとか貧乏の辛さなどは
じぶんの妄想の中にしかない

中学校の校庭を水道管を破壊して水浸しにさせたことがある
絶対ばれないと思っていたけれど授業中
体育の先生はガラッと教室をあけて一直線に向かってきた
首ねっこを引きずられてとっちめられた

集団万引きが流行ったときも
白い絵の具を学生服にいれたまま一日を過ごしていた
学生服が白い指のあとだらけになってしまった
生意気な先輩をコーラの瓶で殴り夏休みというのに停学になったこともある
育ての親が校長室で涙ながらにこの子はこんなに優しい子なんですと力説するのを眺めてもいた

しかし夏目漱石の坊ちゃんでいう清なる存在はいなかった
そういうのは小説の世界の話なのだ
それでも甘やかされて育てられ
苦労という苦労も特になく過ごした
いつもかならずハッピーエンドな人生に変わりはなかった








自由詩 坊ちゃん Copyright 吉岡ペペロ 2010-04-27 23:47:43
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