夜めぐる夜
木立 悟







飾りの無い虚ろが
手に手を重ね じっとしている
水紋が 
生まれる前の色


陽を横切る陽
地に撒かれ
夜を聴き
夜を見つめる


川沿いの
白と黒の祭
生まれつづけ
降りつもる岩の息


消えては喰らい
消えては喰らう
霧に映る楽団
わずかな幽霊さえ惜しまずに


風 新しい母
腹は夜
髪は午後のまま
受け入れられて


爪の重みに動けない指
霧を霧に描くちからから
かたちなくひろがり
飛び去るもの


夜の声がしている
目の片方から片方へ過ぎ
袋に入っては出ていき
どこかの街で 双子に生まれる


道の冷点を踏み進む音
骨でもあり 流木でもあるもの
足下に鳴る光
夜に夜に還る光


差しのべては葉となり
満足の失い針となり
生え落ちる羽のための
色褪せたひとつの墓となり


積乱雲に向けて
砲撃は開始された
片目のむらさきはなくならない
どれほど蒼が砕かれたとしても


空白に当たり
風は落ちる
土は豊かに
光は文字に


むらさきは緑の夢を見た
傷は傷のまま道をゆく
鳴り止まぬ夜へ
鳴り止まぬ夜へゆく



























自由詩 夜めぐる夜 Copyright 木立 悟 2010-04-25 01:13:42
notebook Home 戻る