街路光
木立 悟



夕べのにおい
外灯のにおい
壁の裏側に眠る怪物
屋根の向こうにそびえる火を追い
刈り込まれた生け垣の葉をとばす



一筆書きの街から街へ
人のような虹が駆けてゆく
うろおぼえの路を行け
雨はくりかえし告げている



硝子は夜の
夜は硝子の科学の瞳孔
砕けては元にもどる歌
砕けた数だけ
砕けたかたちの世界になる歌
まぶたに光をのせてゆく歌



ころがりつづける玩具がつながり
新しい玩具になってゆく
急がないと見えなくなってしまう
坂の下へと
坂の下へと這い出た怪物の前を
今すぐ 今すぐ横ぎらなければ



誰もいない壁をすぎ
光は異なる光を聴く
ほどけるような響きの行方
おもむくままの視線の向く先
窓から窓へ 路から路へ
歌のように駆けてゆく
虹のように駆けてゆく







自由詩 街路光 Copyright 木立 悟 2004-10-05 16:36:32
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