きずな
朽木 裕

祖母は厳しい人だ
でも私にはいつも優しい
子供の頃一緒に住んでいたけれど
怒られた記憶はあまりない

とてもせっかちで歯に衣きせぬ物言いで
厄介ごとを集めてしまうような人ではあるけれど
とてもやり手で統率力がある
弁が立つ
はっきりと言えることは
普通のおばあちゃんではない、ということ

でも何か云われるとくよくよ気に病んでしまう
とても、不器用なかわいい人

偶にしか会いにいかない無精者なので
いつも果たして私のことを覚えているものかとドキドキしてしまう
久々に車で祖母をある場所へ迎えに行って生家へ向かう
祖父の仏壇に手を合わせていると祖母が来て仏壇の前に座りこむ

聞こえてきたのは子供の頃、毎朝聞いていた般若心教
だいぶ文字が読めなくなっていて横から教えながら一緒に読教した
読み終わって手を合わせて
明日の朝も一緒に読教したいと思います
と祖父に語りかけたその横顔が忘れられなくて

何故だか涙がとまらなかった

祖父が亡くなってもう30年ほど経つ
30年も寂しかったんだよね
でも30年ずっと愛しているんだよね

私はそんな祖母が大好きだと思った


自由詩 きずな Copyright 朽木 裕 2010-04-16 22:05:20
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