負傷したなら
朧月

片足けがしてひきずったら
地球はなんて歩きにくいと思った
階段は多すぎるし人も多すぎる
田舎という言葉が頭の前のほうで絵になった

隅っこにいるのはあいつじゃないか
おおい おおい 
ちぇ 消えちまった

右腕がきかなくなったら
買い物もできなくなった
カードだ 小銭だ ビニルフクロだ
おやっさんという名前がふいと浮かんだ

あすこにいるのは親父じゃないか
おおい おおい
なんだ とっくにいなかったんだ
ああ
おかあも おばあも いないんだ

足ひきずって
階段は長いなあ 地下鉄は暗いなあ
やっとあがったところで 
ビルは たちはだかっている





自由詩 負傷したなら Copyright 朧月 2010-04-15 21:02:01
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