シューティング・アート・ギャラリー・シアター / ****'99
小野 一縷
体の芯へ 遠退いてゆく 温かさ
残るうちに 白い皺の波 平泳ぎで 進んで
時間から 離れた 遠くから
半目で 音の出ない ブラウン管
回して 見て 目 回して
白い皺の渦から 2回転半捻りで 落ちてきた
眩暈で 墜落しながら 爛れてる窓
流れていく 硬質な雫に 歪に映った
黄金の部屋で 上映中の 無声映画
サウンド・トラックには 賛美歌を
耽美な賛美歌?
黒人たちの 陽気な賛美歌を
BPMを 160で
電子のガムラン
電気仕掛けのシヴァ神が神楽を舞う
毛細血管の曼荼羅の迷路の果て
アフリカのガネイシャが泣いている
トリプタミンをシャーマンに
ハポンの十二使徒が嘆いている
アンフェタミンをサラリーマンに
トーチャー・マシン・デミゴッド
黄金の西へ逃げてゆく
歪なナイフ 捩れたメス 錆びた剃刀
携えた 十本の腕
乾いた血 擦って 苦い吹雪で溶かして
青い星で青い十字架の青い夜に降る
螺旋状戦慄
ヒンドュー・リズム・ロジカル・マシン
その速度 パンの琴線にも触れた
蹄 甲高くスパニッシュに鳴らしながら
角笛をケルティックに吹いた 祝福
銀色のささくれた
破片の結晶 舞い散る荒野
駆け抜けて
メリーゴーラウンド・サークル・ストーン
ひとつ ひとつ
運ぶんだ
動脈を 鞭打って
マントラ・ヨーギ・リボルバー
激鉄を起こすんだ
アフガンの少年の瞳
銃身の上を滑る星
撃たれる前に
撃て
撃たれる前に
打て
ミスター・ケージ
彼は銃で自由を手に入れた
彼は銃の威力を誰よりも知っていた
彼は自由の限界を誰よりも知っていた
ミスター・ケージ
彼は自由に身を捧げ
彼は銃に嫉妬され
心臓に 一撃喰らって 破裂した
シニカル・チキン・ビリーバー
自慢の照準で 狙い撃つ
その直前
撃たれる前に 打ってやる
萎んだ翼で 飛翔しろ
メモリの書かれた硝子の円柱
その中で 泣いている子は
男の子の女の子の子供
漂白殺菌されたクリシュナ
古びた真鍮のコックをひねる
流れ落ちる
赤い舌で舐めた犬歯で噛んだ薬指
左回りに下水道に消去する渦を
ターンテーブルのチャクラで回して
ベッドの中でヴァイブする
サンスクリット・エレクトリック・ジャバ・マシン
輪唱される神の名は
震動の振幅のみぞ知る
欲深い聖歌をサンプリングした
近未来のゴスペル