オキモチヲクダサイ
久亜麻ジュン

雑踏を行くと

路上で演技をする人を見かけることがある

今日は渋谷で

黒人がドラムを叩いていた


バスドラの前に置かれた

あれは何だったか

脱衣カゴのような目の粗い入れ物に

‘オキモチヲクダサイ’と

拙い文字で書かれている


この寒空に

響かせる彼のチープなリズムは

素人耳に聞いても

お世辞をのたまうことを躊躇う程の

小さな音楽だった


僕もみんなと同じように

ポケットに手を突っこんだまま

足早に彼の前を通り過ぎ

最終電車に乗ったのだ



自由詩 オキモチヲクダサイ Copyright 久亜麻ジュン 2010-04-15 18:22:30
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