日没
こしごえ

虫の音を
聴く
深い夜へ
星が瞬いているのも知らず
あのひとは
ねむっているのか
荒野が明けることは なく
しわぶく空よ ここに直れ。

わたしは 暗闇に透ける
深淵のねむる火
風化する
星の反射する光よりも冷たい化石を
黙読する
ひと知れずこちこちと発する

しずしずとさそわれる夜に霧の昇る河が流れ
星の霊園を墓守が見回る
亡霊は沈黙のかわりに星の光の
ゆうげをいただく
青い空は河に飛びこんでとけてしまった
わたしもそろそろ参ろうか
なにひとつもたずに

見果てぬ水平線へ銀色の鐘が冴え響く
遠くで。ここにねむる声
あてさき不明の約束を大輪がしぼみ
結実したのち
食卓にのぼる
無表情な果物ナイフはぎりぎりと
かわいた耳を伝導する
いつもひとりで
かたむいてゆく

青ざめた境界に
柱時計の音のする
しずまりかえった家の
夜明けはまだか
それっきり











自由詩 日没 Copyright こしごえ 2010-04-15 10:33:45
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