モンスタ—
ヨルノテガム








 運動会に
 宇宙船の円盤が降りてくる
 
 雲一つ無い快晴の空に
 組み体操の人々の束が
 何らかのメッセージを
 送っていたのかもしれなかった

 しかしそれに気づいたのは数百人の群衆の中、
 禿頭の校長ひとりだけであった
 愕然と一部始終を目撃し宇宙船からコドモの
 宇宙人二匹が光に包まれ降臨、組み体操の扇、
 倒立、ピラミッドの型に寸分くるわぬ間で 
 決めポーズをかましていったのだった

 欠席者がいたのか?
 二匹分のスペースはナゼあるんだ?
 扇の要に宇宙人は無いだろう・・・・しかも・・・
 ピラミッドの土台・・・・重要なポジションだ・・
 ・・・・がんばれ・・・・う〜ん 力持ち・・・・
 ・・って他の子どもたちは違和感ないのか?
 しかしも演技は無事、拍手の渦の中で立派に
 終えられてしまった・・
 清々しい表情で退場門に はけていく子供たちの中に
 二匹のコドモが二匹の親宇宙人の元へ駆け寄り
 抱きついて頭を撫でられている・・・・・


((・・・皆さん、よく聞いてくれ・・・校舎の上に
 巨大な円盤が駐車しているのは大掛かりなイベント
 じゃないと思うのですが?え?どうなんですか?
 PTAの会長さん・・・市議会議員の偉いさん・・
 ・・次のクラス対抗リレ―への期待興奮や緊張感。
 のその前に まずこの未知との遭遇の件を片づけや
 しませんか・・・え?皆さん!!・・・・・・
 あっ サヨナラ、もう帰ってゆくよ、この盛り上がる
 終盤の紅組と白組の点数には興味無いんだねぇ・・・・
 ・・・・彼ら・・・・・・))


 色とりどりの国旗が連なる
 運動場の真上を覆いつくすばかりに
 円盤がキラキラ旋回している


((・・・実際見ると思ってたより デカイんだねぇ・・
 こんな素朴な感想でさえ終りの挨拶で触れられない
 なんて・・・・・でもありがとう・・教師してきて
 よかったよ・・・・・サヨナラ・・・・・・・・・
 『皆さんは宇宙人っていると思いませんか?』
 さりげなく疑問形にして 話の途中に入れてみるのは
 利巧な方法なんじゃないか・・・・・唐突すぎないか
 ・・・・・空気読めてない だろうか・・・・
 
・・嗚呼・・わたしも その船に

 連れてって おくれ―――――       ))







 「紅組 ガンバレ ガンバレッ」
 「白組 ガンバレ ガンバレッ」









自由詩 モンスタ— Copyright ヨルノテガム 2010-04-15 02:39:14
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