かみきった
志賀羽音

 どろどろした嫌なものは、ばっさり切り捨てた。 切られている時の光景は今でも忘れていない。
 ばらばら落ちてゆく黒い塊。 それに比例する開放感。 首筋を風が撫でる気持ち良さは真夏の風鈴みたいだ。
 軽くなった身を弾ませ、白いスニーカーでコンクリートを蹴り上げた。 空に手を伸ばして雲を抱き、ふわりふわりと浮き上がる。
 微笑みを零して、わたしは宙を舞った。


自由詩 かみきった Copyright 志賀羽音 2010-04-13 15:01:39
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