赤い瓜
ホロウ・シカエルボク
膝の皿を皮ごと穿孔して
瓜の種をひとつ植えた
わたしはもう歩くつもりがなかったから
そこから綺麗な瓜が
生えてくるといいなと
わたしの身体には土がないので
わたしの身体は太陽にあたらないので
ここから伸びてくる茎は筋肉のような色をしている
水の代わりに血を吸い上げるから
わたしはたくさん食事を取らなければならない
おかあさん、ご飯頂戴
瓜が出来るまでに
どのくらいの時間が必要なのかわたしは知らない
だけど
時間はどうせ腐るほどあるのだから
静かに膝を立てて座っていればいいのだ
ベッドの上に
やわらかな
ベッドの上に
カレンダーをすべて捨ててしまったので
いまが何月の何日で
もしくはどんな記念日だったりするのか
わたしにはまるでわからない
だけど
こないだから妙に暖かくて
窓の下から聞こえる子供たちの声が妙に騒々しいから
きっと春になって
新学年で新学期が
始まったのだ、それはもうドラマティックに
桜まい散る空の下で
わたしを待ってた人はいなかった
少なくともわたしには
誰もいないみたいに見えた
そこに見えるものがすべてなら
わたしにはそれが結論でもよかった
わたしは誰かとわかりあうことなど
すこしも望んじゃいなかったから
集団の論理、集団の論理
集団の論理がわたしのこころを殺す
わたしは殺される前に
彼らにまじわるという選択肢を捨てる
ハッハー、ざまあみろ
わたしはあなた方と
おなじ地平になど立たない
わたしは膝で瓜を育みます
赤い瓜はどんな味がするでしょう
そこからは
きっとわたしの肉体の味がするでしょう
美味しいですか
美味しいでしょうか?
こばんで生まれる食物の味は
あなたにだってきっと本当はわかるはずです
それはある意味で手に取ることの出来るこころなのですから
おかあさん、ご飯頂戴
わたしにはたくさんの血が必要なんだから