こくはつします。
あぐり
じん じん
蠢いているんだろう
いや、生きている、それ。
わたしのあしにいまだにすみついていたしろへびにあいかわらずなまえはつけてやっていない
ヒューズがとんだ
耳元を掠め飛んでいくグラスは未だ
硝子片ではないから安心してくださいね
と
先生たちが言っている
はい、わかりました
と
わたしたちは出来る限り多用な音声を押し込めて返事する
黄色い帽子だった
それは男子と
それは女子でわかれていて
男子の帽子のつばには緑の裏地
女子の帽子の裏にはなんにもなかった
なんにも
なんにもなかった
わたしはそれが悔しくて
どうして、なんていう幼い気分で尋ねたくはなかったから
「おとこのこのぼうしの裏っかわが緑なんは、緑なんは間違ってると思います。だってそれは、だって、緑やったら顔に光が反射したときにめっちゃおとこのこの顔が宇宙人みたいな色に見えるから、やから、わたしはあかんと思います。うちの弟がもう三歳やから、もうすぐ一年生になるんやけども、うちのこうクンはきれいな白い顔やからそんなん、あかんと思います。」
じわ じわ
沁みていくんだろう
だって、包んでいく、それ。
わたしのあしにいまだすみついていたしろへびがかみつづけているうすかわにはすっかり
あなたの「やさしさ」がからまっていた
中庭に椅子が飛んだ
担任が投げたのだけれど
もう彼は安心してくださいね
なんて
言わなかった
わたしはもうわたしたちの思考を知らないまま
あぁそういえば飛ぶ教室という本があった、
あれは児童文学の金字塔であると言われていたなぁと思いつつ
もうすでにばらばらに足が飛び散っているだろう「椅子」を
思うことなくひたすらに文字を書き詰めていたのだ
なんにも
なんにもなかった
わたしは正直くやしくて
様々な理論でその担任をねじ伏せたくて仕方なかった
不条理の権化みたいなその教師にむかって平手でもなんでもくらわせてやりたかった
「先生、椅子を投げるのは間違っています。先生、確かに新田くんは遅刻してきました。ルール違反です。でも先生はルールを破っても椅子を投げるだなんて言いませんでした。もし仮にそんなことを言っていたならこのクラスの誰かが他の先生に言っていたでしょうね。でも、でも先生、本当はそんなことじゃないんです。先生が遅刻させまいとしたその理念は、椅子を投げることで伝わるものなんでしょうか。先生、先生、もしそれが窓際にいた陽子ちゃんにあたっていたらどうしたんですか。先生、先生、どうして、どうして、どうしてわたしたちはこんなにもかなしいことばを伝えあわなくてはいけないんですか。先生、どうして。どうして。」
しろへびがまたなにかをしゃべろうとしたけれど
あきらめていく
かしこいからかもしれない
このこはかしこいからかもしれない
夢の内側で私はいつも誰かを告発しているのだ
あの人たちだけでは飽きたらずに
いつもいつも
どうして、どうして
と
喩えようもない恍惚感
言うまでもない正義感
わたしは今なら笑って問えるのだろう
それは問いかけではない
どうして?
どうして?