育花雨
霜天

私と君がバランスを取り合うこの世界は、い
くつかの悲しみによって支えられ僅かに綺麗
な側面によって、装飾されている。書置き。
降る言の葉。てのひらを傘のようにしてあな
たは、透き通る雨に打たれて花になる。育花
雨、通り過ぎる、水が落ちる、ただそれだけ
の触れ合い。あなたは咲き誇り、こんなにも
香りが。何番目の、曲がり角を曲がっておけ
ば、私も咲けたのだろうか、なんて。桜色、
煙る街並み、育、花の雨。水溜りに落ちる空
を飛び越えるには、私の足は小さかった、の
か。窓枠、四角く区切られた雨音。隔離され
た世界との繋がりを、金槌で、叩き割る。ほ
らこんなにも世界は深く連なっている。呼吸
の中で、私を拡散するように混ぜていく。い
つか私が咲き誇る、細かい花になれます、よ
うに。育てる花の、雨。まだ遠い私たちだっ
たから、冬の、コートをいつまでも手放せず
に。近づいてくる煙のような雨に打たれて、
溶けるように静かに、咲くばかり、で。


自由詩 育花雨 Copyright 霜天 2010-04-06 23:03:14
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