佐藤伊織

日常はなんともかけがえのないものなのに
サラサラと指の間から抜けてしまうような一日

何も変わらないものはないのはわかっているつもりでも
琥珀になって

世界中にそんな風に人間が住んでいるというだけで
皆同じように砂のように

すごいなあ

桜の花が咲いたよ
白く光る花弁を一枚
万華鏡に咲く満開の花の中を歩くと
どうしてこんなに皆サラサラとすり抜けていくんだろう
風が吹いている方向を影だけが
歩いている


日常が
なんのことはない日常がなんであんなに輝いていて
それが「毎日」なんて言葉に集約される
嘘だよ。そんなことは嘘だよ。

どうしてみんなサラサラと流れていくのだろう
笑い声が影になって風に飛ばされていく
僕がそこにいることを確かめるために、両手を差し出すと
皆がわあっと笑って空中を舞う

そうかここにはもういないのか
もうどこかへいってしまったんだね
皆は空を舞いながらピンク色の空がサラサラと音をたてて
風に飛ばされてどうしても追いかけることもできずに
ただ僕はそこにいるだけで

そうしていつまでも
みていたいんだけれど
それはできないんだね


自由詩Copyright 佐藤伊織 2010-04-04 23:31:46
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