赤い言葉
砂木

マジャン と聞こえたので
えっという顔になった私に
中国人の友人は ジェスチャーをしつつ
マジャン と言う

なんとなくそのしぐさから
ああ マージャンね というと
日本では マージャンというのかと
改めて知ったようだ

マジャン と口真似してみせると
ああ そうそうというのだが
本場の発音にはほど遠いのだと
声にだしてみてわかる

布きんでテーブルをふくであってますか
うん あっているよ
雑巾でふくって言わなかったよ
雑巾でふくってもいうけど
ああ 雑巾がけともいうからね
雑巾をかけろと言われたの?

たわいもない会話の中
思わぬ落とし穴に気がつく

雑巾をかけると 雑巾がけと 
雑巾がかけるでは まったく意味が違う

だいたい伝わればいいと思うよ 方言もあるし
と その場をおさめようとしたら
生活に困らなければいいからねと
少々 怒らせてしまった
軽く扱うつもりじゃなかったけど
言葉がわからないという事からくる
身につまるような悲しみを
そんな気持ちを理解して貰えないという
得体のしれない悲しみにしてしまったようだ

時折 ジェスチャーと漢字で話す
漢字と言っても中国語は漢字ではなく
その中国語は漢字にないよと 
またそれが発見でもあるけれど
抽象のような発音の意味に
お互いに真剣にならざるおえない

たわいもない会話をしつつ思う
ああ わけのわからない抽象詩も
書いてきてよかったな
真剣でも伝わらない言葉があるとわかる
でも あんなこんなの抽象詩を読ませたら
勉強の邪魔になるだけなんだろうな

手相をみてあげると 彼女が私の手をとった
手相に国境はないのだろうか
爪が赤いから血液の循環がいいと言う
うん それならわかるよ
冷たい手は暖めよう
五十五歳くらいで病気をするかもしれない
そうなの? そうなのかもしれない
未来は誰にもわからないから






自由詩 赤い言葉 Copyright 砂木 2010-04-04 22:31:35
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