アシックスだったスニーカー
番田 

スニーカーは高いし、デザインも良くなかったので買わなかった。冷蔵庫には買ってきたばかりのコーラが入っている。 そんな気がする。海外で開発されたやりかたで、休みもなく会社に閉じこめられていたのはいつだっただろう。 そんな日には何かを夢見ながら歩いていた気がする。

僕にはクラスで友達のいなかった頃もあったなと思っていた。僕がまだ思春期だった頃、田んぼにはトラクターが走っていた。 緑色の向こうに蝉の鳴く林が茂っていた。刈り取られた稲が発する匂いが歩道の先まで覆っていて、誰もいない道を一人で帰ったりすると テレビ番組で見たいくつかの出来事を思っていた。

晴れた日には前を走る人の砂が巻いて、スーパーで見た そんな気がする夕闇に誰に飲まれることもなく腐っていくのだろうか。一日の終わりにはそんな光景を思い出していた気がする。僕にはなんにもわからない。わからないけれど、今日も河原に行くと誰かがラッパを吹いていた。 大きな音を出して授業を妨害したりしていたこともある。先生が止めに行くと、ハンドルをひねって走り去っていった。卒業した生徒がバイクに乗ってやってきたり。そんなふうにしながら一日が終わっていった。

学校の外は通る車もなく、外には時折、自転車がカーブを曲がっていて、青いジャージを着た人がいくつかの群れになって外のコースを走っていた。 部活ではいつもインターバルトレーニングばかりやらされていた。丸くなった土埃を見ながら走っていた。 呼吸器官を鍛えるにはうってつけのものだという。


散文(批評随筆小説等) アシックスだったスニーカー Copyright 番田  2010-04-03 20:16:33
notebook Home 戻る