ツォ
イシダユーリ
自然や
動物や
静物を
つかってしか
ものがいえないなんて
なんて
と
そこから
さきに
つぐ
ことばが
ない
なんて
なんて
と
沸きあがった
からだが
うそのように
しらないものに
なった
わたしたちも動物なのだからよい
わたしたちがあつらえた静物なのだから
わたしたちも風景なのだから
よい
蜘蛛が DIRTYという文字の上をあるいている
その下にある女の子の胸元にとまる
そうおもっていたあの頃
それならば
いまはどうおもっているのか
蔑もうとする
それは
たんに
生理的な
欲求として
しゃかいの
じゅんばんを
得る
わたしたちも自然なのだからよい
一汁三菜
のあとに
拭かれる
ながい廊下に
嫉妬が
うつっている
なんと
きれいな
廊下だろう
と
頬を
なすりつければ
シャツの
一番上の
ボタンをとめた
朝のような
誇らしさが
こみあげてきて
そうおもっていたあの頃
それならば
いまは
どうおもっているのか
この腕も
腐るのだと
無理やりに
信じようとすれば
誇らしさが
脱臼して
きりきざまれた
野菜が
肉になる
「チカちゃん わたしのかみさまになって」
「チカちゃん わたしのおとうさんとおかあさんになって」
「チカちゃん いっぺんになって」
「チカちゃん わたしのこどもになって」
「チカちゃん わたしになって いっぺんになって」
「ユウちゃん わたしたちも自然だからよい」
「ユウちゃん わたしたちも醜いのだからよい」
「ユウちゃん わたしたちも残酷なのだからよい」
「ユウちゃん わたしはなににも興味がない」
「ユウちゃん わたしはチカちゃんじゃない」
「チカちゃん わたしの感情になって」
「ユウちゃん わたしたちの世界におとこはいない」
けれど おちんちんはあった
「ユウちゃん わたしたちにおちんちんはあった」
ものが
いえない
わたしの
感情に
なって
わたしの
腹を
殴りつけて
肉になる
前に
野菜の
残骸を
きれいな
廊下に
ぶちまけて
いま
おもってること
など
なにもない
と
泣き叫んで
わたしは
なくした
ボタンをさがしてあげよう
さがしてあげよう
なくした
ボタン
さがしてあげよう
あげよう
にんげん