酔歌 - 7 /****'04
小野 一縷

緑青の浮いた青銅の像が喇叭を吹いている
悲嘆の打ち寄せる波辺で

血塗られた大地 血塗られた海洋
血塗られた大空 血塗られた太陽
血塗られた系譜 血塗られた血縁
血塗られた舞踏 血塗られた譜面
血塗られた快楽 血塗られた覚醒

暖かい 美しく映える 赤の温度
温い苦味

酔いの歌 その詩句らが零し続ける
ここに伝承 示される 酔いの歌の系譜

回転してくる原因 肉迫してくる結果

おお 

この眩暈は なんという甘い暖かさだろう
甘美とはこの事だ 

「おまえ 他に何を どんな状態を 
  
 甘美と呼べるか 示してみろ」

図々しく堕落とは あえて呼ぶまい あまりにこの酔いは雄弁だ
叶わない 絶対高揚 絶対入睡 それらが溢れさせる
これら智慧としての 詩句
似非論客はケツを捲くって 逃げろ ほら
おまえが10年かかって お勉強したことを
ぼくは僅か 五分間 三服で手に入れる

死ぬまでに幾つ達成できるか それに興味がある
言葉の持つ真の意味 その真実を知る事 
その数を ただ増やしていく 
この酔いに 塗れ泳いで 上手く
これまでに得た 真実の数は ほんの僅か
まだ 未だ 到底満足できない

ぼくには 詩人として 言葉の持つ真の意味を 
己の詩句とする義務と権利を保有する自由がある

あなたが 何を伝えたいのか それは問題じゃない
それは あなたの詩を読んで ぼくが決めること

この詩に於いて あなた自身が 
ぼくの この詩業の痕跡と成るように

また 何処か遠い場所の あなたが
ぼくの この詩業の痕跡と成るように

そこにいる あなたの心の一片になって
ぼくの詩は散ってゆく 時の経過が破綻した 
夢幻の中 無意識の底へ 
一塵の眩みになって 染み込んで

針のように 突き抜ける

吸引される

喇叭が 鈍く 輝いた










自由詩 酔歌 - 7 /****'04 Copyright 小野 一縷 2010-03-31 18:38:52
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