かなしみ等式
あやさめ

 哀しみの絵とその音のない映画から
 スクリーンが破かれて救い出された
 洪水のない水浸しの家はとうに歩けない

 哀しみのない歩き方はやがて窓の外に出て
 降り積む雪の夜を滑り出すかどうかは
 知らないだけでいいから

 それでもこのべと雪の降り積む夜は
 否応なく誰かの腕を切り落とす
 目のない動物が声をあげずに笑うんだよ
 と語り継ぐ

 やがて明けた空から落ちてこなくなったパラシュート
 喜びのあまり打ち上げられた銃弾が戻ってきても
 誰も気にしないでと言いたそうにしているが

 喜びの声から始まるバタフライが
 ところどころで山に当たっては層を反転させ
 彼らに霰の降り積む夜をプレゼント

 それでもこの霰が降り積む夜は
 かの有名な砂漠に誰も癒しを与えないから
 向こうの彼女は声をあげずに泣くんだよ
 と語り伝える

いずれにしても彼ら全てが身勝手すぎてしょうがないと
向こうの道で車の中で
選ばれなかったある一人の若者が
声をあげずに泣くことには違いない

人称は人称ゆえ不特定
ぼくらの等式は任意の数字と
同じ類型で今日も整理される

同じ類型で


自由詩 かなしみ等式 Copyright あやさめ 2004-10-02 22:32:35
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