花見直前
……とある蛙

三月の飛鳥山
王子駅から望むと
厳冬時とさほど変わらぬ
枝振りの樹々が
何の衣も纏わず
剥き出しではあるが
陽光に透けて
半月後の桜色の
淡い期待を靄のように
纏っている

穏やかな陽光の下
全く不似合いなスーツ着た自分の
人に話せぬ澱のような溜息が
京浜東北線の車両と共に
引きずられてゆく




小学生を連れた母親達
吊り革にぶら下がろうとする悪がき
それを止める母親達
ボリュームのつまみの家に置いてきた小悪魔どもは
あっちへ行ったりこっちへ行ったり
結局、母親もおしゃべりに夢中で
気づいたように子供に注意する振りをする。
何も変わらない子供たちの口癖は

どこで降りるの?
どこまで行くの?

結局一生言い続けるのだ
どこまで行けばいいのか。
何をしたらいいのか。
分からない時はただ話続けるのが
子どもで何時までも変わらない。
大人に叱られると頭がパンクして
対応不能でフリーズする。

人のこと言えるのかなぁ
頭で分かっているが
自分でも花見となれば
またどんちゃん騒ぎをするではないか。

分かっちゃいるけどやめられない。
っか


自由詩 花見直前 Copyright ……とある蛙 2010-03-25 19:07:55
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