ゆでたまごの朝
鵜飼千代子

幸せは 手に入れた瞬間から
少しずつ こぼれていくから
             
幸せを 手に入れたなら
真空パックで 密閉して
             
もう 無くしてしまわないように
幸せを 膨らませるための努力より
幸せを 空蝉と納得せずにすむ為の
努力をしていた

聞いてもらうことで癒されることは
わかっていて 
聞いてもらうことで負わせることも
わかっていて
二人とこころのバランスのはざまで
たゆたっていた

殻を破って飛び出したい
弾けそうなエネルギー と

殻が とろんとした自分を
守っているのだという

歯止めが

身体に嵐を起こし
静電気で逆立ちそうな
髪を押さえる

何を 恐れている?
どうして 信じられない?
いいじゃない 迷惑かけても。

あなたに 飛び込もう
受け止めて

ゆっくりと ゆっくりと
少しずつ 急がずに
わかりあえれば それがいい

あなたの温度に とっぷり浸かり
つるんと剥けた 朝が来る


1997.11.21. YIB01036. Tamani Moegi.
初出 NIFTY SERVE





自由詩 ゆでたまごの朝 Copyright 鵜飼千代子 2010-03-21 21:53:26
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