弾頭 / ****'01
小野 一縷



延々と旋回して ぼくらが密集するのを 待っている 
銀の鳥群
あれは 狩りの前の儀式


狩る側も
狩られる側も
祈っているんだ




戦場へ行こう
両親を想って 兄弟姉妹を想って
あいつを想って あなたを想って
奴隷のように ずるずると 未練を糧に
戦場へ


塹壕の中で聞いたよ 
ぼくの生まれたての 啜り泣きを
強さへの憧れを殺したいんだ 
憎悪に任せっきりで 
だから
引き金を何時だって引ける
最前線へ 踊り出る


高速で肩を突く 掃射の震動に震えながら 
一度ずつ 心を込めて 一掃してゆく
あんな奴も こんな奴も 


憧れよ くたばってくれ


隣りの奴も
後の奴も
向こうの奴も 軍隊式に右ならえ
愛だ恋だも 皆で撃ち殺した
ぼくを照準で 捉えた奴も 同じく
心を込めて ぼくを狙っていると 信じたい


慈愛よ ぼくを撃ってくれ


終わらない虐殺を 誰にも咎のない殺しとして
ぼくらが 引き金を引く限り
ぼくらは 
いたるところに 生まれ落ち あらゆるところで 死んでゆく
ぼくらは 生まれ 死に 生まれ 死に 生まれ 死に 生まれ 死に・・・


最も前で 最も先に 撃ち殺したい

「最も前で 最も先に 撃ち殺したい」


最前線への配置を志願する

「最前線への配置を志願する」


みんな ぼくに 倣えばいい


何時だって止まない耳鳴り以上の 
銃声と怒号と悲鳴 
だけど
夜の静寂が一番 耳にしみる


昨夜 野戦病院で 一人
右脚を失った戦友が自殺した
残された夜の時間は いつになく硝煙臭く過ぎていった
夜空に解ける煙が 静けさを連れ戻して 


目覚ましの爆音に走れ
土嚢を跳び越して 引き金を引け


降り注ぐ赤い星が
ぼくらの希望と栄光を台無しにしませんように
戦場を駆け抜ける爆風の中に舞散る叫び声と肉片に
戦の神の断罪に 祈るように 
きみの残骸の脇で 手を合わせた
ぼくら 残された者の残命が どうか呪われますように




鳥群が舞い降りる





自由詩 弾頭 / ****'01 Copyright 小野 一縷 2010-03-21 10:58:54
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