涙あふれて
西天 龍

涙、あふれて止まらない
まるで透明な血
鼓動にあわせ
まぶたのずっと奥
体の真ん中から
どくどくあふれて止まらない

もういいからと
誰かが許してくれた
誰? 何を?
と振り向いた瞬間
遥か過去から
おびえながら
歩いてきた道が鮮やかに見通せて
心の墓標に封じ込めた記憶が蘇る

そうだった
ごめんね。
声に語りかけると
微笑みだけが残り
そして自分も一陣の風に消え
溢れた涙の池の
一点の波紋も消える

涙、あふれて止まらない


自由詩 涙あふれて Copyright 西天 龍 2010-03-20 09:51:59
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