さあ でかけようぜ 狩りに
オイタル

さあ でかけようぜ 狩りに
黒鉛のナイフを左手に
舌先の罠を仕掛けに
いつもの通い路は未だ暗いが
彼方で獲物の
かなしい誘惑の声が響く

さあ でかけようぜ 狩りに
えさは厳冬の風に晒した肉
肩にはなめした兎の毛皮
今日は他には誰も連れて行かない
涙もろい鉄砲撃ちも
すりきれた牙の猟犬たちも

さあ でかけようぜ 狩りに
いいだろう 返り討ちも覚悟の上
追い詰めた獲物の毒も想定の内
始めから負けるつもりはないが
時ならぬ風が行く道に小さく
落ち葉を巻き上げる

さあ でかけようぜ 狩りに
立ち並ぶ墓標が街に白く膨れ上がる
その中にいくつかの見知った顔
傍らに踏み散らされた手向けの花
帰り道から足跡は消え
ポケットにのぞく暗いまなじり

路地裏に暗くこすれた血は俺の血
だが
さあ でかけようぜ 狩りに


自由詩 さあ でかけようぜ 狩りに Copyright オイタル 2010-03-19 20:16:41
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