馬銜(はみ)
……とある蛙

夕陽の傾きかけた街の一角に
何人もの成人した人間の列が歩く
皆一様に下を向き黙ったまま歩き続ける。
歩いている間は生きていられる。

立ち尽くした人間は片っ端から
列最後尾をのろのろ走っている
ゴミ収集車のテールゲートに放られて
回転板に押しつぶされて処理される

だから黙々と皆歩いている。
その列が延々と地平線まで続く
鞭を振るうのも同じ人間だ。
彼らには鞭を振るうことが自分の誇りの全てだ。
誰から尊敬されることもなく

たまにゴミ収集車の回転板に頭を入れる奴もいる
それも立ち止まった奴と何にも変わらない。
そのときはあっと叫ぶものもいるが
直ぐに忘れ去られて列が一人分つまるだけである。

皆一様に馬銜(はみ)を噛まされている
馬銜(はみ)を噛まされた人間共の一人が
自分だったことに気づいて
すこし驚いたが、今更後悔する気もなく
そのままの道を歩いてゆく

噛まされた馬銜(はみ)のため
僕の笑いが歪んでいる
全ての人間の笑いが歪んでいる。
それが馬銜(はみ)と今歩くことの苦しさによるものだけではないことを

みんな知っている。



自由詩 馬銜(はみ) Copyright ……とある蛙 2010-03-17 09:51:21縦
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