白夜時代
高梁サトル



夜と昼と海が三分割された世界で
神経や筋肉や骨格のことばかり考えていた
何を考えてるのって聞かれて
沈黙するたびに擦り減っていった何かに
ぽつんと謝る、

 (ごめんね いつも、うまくまもってあげられなくて、ごめん)

不夜城の奥深くで夜光虫を集めても
豊かな光の輝きになれるわけではないけれど
繋がっていたへその緒を切られて
何もない荒野に放り出されたあの日から
必死にもがいている、

 (さむい こわい いたい、あたたかい うれしい、ふしぎ)

失くしたものに見合うくらい
世界は変わってくれたのだろうか
零れ落ちていったものたちが脳裏に過ぎるたび
もっとこの手に力があればと細い指を憎んで
うすい唇を噛む、

 (だいじょうぶ まほう、だれがなんといっても、しんじてる)

明けない夜と暮れた朝を連れて
ゆるやかな季節が撫でる海へ帰ろう
生まれてゆく連続の軌跡を見守りながら
光と闇のしじまへ降りてゆく
どこまでも、

 (ただいま あのね、いろんなこと ううん、なんでもない



自由詩 白夜時代 Copyright 高梁サトル 2010-03-17 02:37:46
notebook Home 戻る