アルミニウムのインゴット
竜門勇気


つべたい夜の中
その世界の話をします
震えた時の気持ち
正直に話せます

靴の中には雪が
最後の賭博をして
面倒な気持ちごと
命を譲りました

誰も顧みない
ちっぽけな硬貨
幾千万トンの
アルミニウムのインゴット

靴の中で水が
震える爪になじみました
誰の痛みも感じない
彼女の痛みだけが
この暗闇では光

不安は
忍び寄らない
気づくと
囲まれてる
ほんの少し捨てれば
救われるんだ

憂鬱は
腐らない
純粋な
鉱物だ
これ以上無く軽い
無駄だらけの気球だ

凍えるような素振り
少しだけ分かります
丁寧な悪意
神様は白衣
汚れようも無い白さで
途方にくれている

情報は真理だ
すべてに一つ足りなければ
ただのゴミだけど
いつまでも偽物で
あり続けるのも悪くないと気づいた
素足のままじゃ天国にはいけない
だから別に天国には行きたくなくなった
生きてることに大義名分を付けたかったけど
空を見ても星を見ても
犬を見ても猫を見ても
虫を見ても誰を見ても
人の為なんかに生きてはなかった

千の喪失と一つの継続が同価値で
僕はふざけた犠牲に激怒する
そんな熱が何を生かしたんだろう
何かの役に立たないものを
愛してるヒマだけはなかったってのか
救世主にイエスと応えるヒマはなかったけど
今からあちこちに謝辞を述べるのもうんざりだ

ねえ
あの時計は
時を刻む事にうんざりしてるのかな
ねえ
財布の中のアルミニウムは放浪に疲れてるのかな

靴の中の指は
今も自由に動くよ
バカがくれた自由だって
知ってもまだ

靴の上の僕は
どこにでもいくよ
せいぜいたかが知れてる
あちこちだってでも
傷すら付かない
こんなとこよりはマシだもんな
猫背とアルミニウムを連れて



自由詩 アルミニウムのインゴット Copyright 竜門勇気 2010-03-12 04:48:32
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