耳の奥で変わらず響く、あの頃の歌
山口清徳
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌。
身の丈に合わないローンを組んで買ったギター
必死にバイトして、自慢の相棒を抱えては
毎晩のように街に出て歌ってた
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌。
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌を
大好きだと言ってくれた君はいつだって
ひとりで僕の歌、いつまでも聞き入って
少し恥ずかしそうに一緒に口ずさんでた
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌を。
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌は
ささやかだけれど幸せな家庭と引き換えに
もう歌うことすら、なくなってしまって久しい
毎朝8時に家を出て灯りの消えた家に戻るまで
耳の奥でさえ響かない、あの頃の歌は。
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌。
いつしかローンも払い終えた自慢の相棒に触れるより
娘の頭を撫でてやることの方が多くなった
けれどいつの日か、物心ついた頃に埃だらけの相棒を抱え
錆びた弦を押さえながら、娘に聞かせてやれたらいい
耳の奥で変わらずに響く、あの頃の歌を。
(古い音楽仲間に)