#6
山口清徳

曇天にわかに掻き乱れ崩れ落ちる様まるであざなえる縄のごとし
一度濁ればさりとてそれはまた再び来る世の乱れ
踏絵差し出すその腕切り落とす我が刃、微塵に散り果て
来たれども来たれどもこの道指し示す針に狂いなし
己の価値を信じ狂い咲き乱れ打ち死に物狂い、
留まれど留まれど得るところなき暴動ものの見事に砕け落ちる
敢えてそれを喩うなら根絶皆無
それもまた真を得て対極化された真髄の彼方此方、裏返しのアンチテーゼ
そこはかとなく漂う硫黄臭、死の芳香

生まれ来る絶望に立ち向かう勇敢な騎士よろしく散り行く華の花弁のように
そこかしこに芽生える冬を迎えた降雪、吐く息の重さに身悶え
支えかねる重苦の責めに煉獄、懊悩、煩悶の末に芽生えた憐憫 
積み重ね踏みしだき放蕩の果て、
朽ちた夢の荒れた虚無に立つひとり芝居
空回り激情の流れ落ちる水の伝う立て板のブリキ
響く打ち鳴らす金と金の火花散る咆哮の如き
衝動満たされし空腹の鼓動、絶句ひた隠す片鱗の青き貪欲
言葉さえない無音真空静寂生まれ来るふしだらな破滅
届かぬ手をひた伸ばし虚構にくぐらせながら

絶望の渦に身を投げるユリディス
死神の顎門、降りかかる溶液めいた回廊の狭き道筋に
灯篭のように浮かぶはただ存在の証拠たる爪跡
冷たい血の流れに沿うように逆らうように
船出さえ待ち焦がれ今もただ揺れている、揺れている
新たな日々の止まり木たる傾向を欠いたデッサンの素描
移ろぐ花弁の転がる葉音のように
気もそぞろながら、贖う狂気を置き捨て去るために
手にしたるは罪のない無垢、ただこの一点。



自由詩 #6 Copyright 山口清徳 2010-03-08 06:26:16
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