固定
佐藤真夏

電池の切れかかった壁時計のなかで
だいだい色の秒針が痙攣している頃
安部公房は女に砂をかけている

(カチ)、

    (カチ)、

はだかで
荒野にいました
髪の毛ばかり食べるうさぎみたいに
おなかにたまった 異物 を
吐き出せずにいました


(カチ)、

砂の女が
翅のない男と偶然を越える頃
わたしの
指先にほんの少し花
の匂い
もうすぐ
たぶん根が生える


     (カチ)、


自由詩 固定 Copyright 佐藤真夏 2010-02-23 00:51:05
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