薔薇のエスキース
小池房枝

だいたいは同じ形の
だいたいは同じ色をした
少しずつ違う大きさのものを
中心から外へと

奥に
手前に
はしを重ねながら互い違いに
重なりと重なりとの間隔は
徐々に広げながら

ひとつひとつの形はオーバル
水をすくうときの手のひらのように
見えない大質量星に撓んでしまった空間のように
大きなサラダスプーンほどの曲率
スープ皿ほどのふちの反り

巻いていくときには
内側から外へ
下のほうでだけはタイトに重ねて
フィクスして
上のほうではルーズに

きつく巻き上げたときの形は
紡錘形
ゆるやかに開いたときの形は
双曲線のカップ

上下に
あるいは全体の内から外へと
輻射するスペクトルには
グラディエーションがあってもいいし
なくてもいい

巻き上げられていたものが
浅く平らかにほどけるとき
その宇宙の中芯は顕に見えても
見えないままでもいい

ただそこからは
複雑な組成の幾組かの分子たちが
放射され続けていて
かつて真空から生まれて来ては
ゆらいでいたものたちのようで

どうぞ神さま
違う星の神さま
説明しますから聞いてください

地球にあった薔薇というものの形を
花の生命を


自由詩 薔薇のエスキース Copyright 小池房枝 2010-02-21 21:33:47
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