新年
salco

冷蔵庫のブロッコリーには100年間が詰まっていて、
それが1日で10年ずつ老いて行く
可哀相なカリフラワーはしかし上海まで辿り着けなかった
レタスは春を夢見るあまり自分を花だと思い込んでいるけれど
冷蔵庫はやはりドの音で低く唸り続けているのだ
ドというのは決して休符しない プラグを抜いたとしても。
私は桜材で出来た男のぶよぶよな腹をごろごろ転がりながら
安シャンパン飲んでいたけれど、地球の裏側に落っこちてしまったよ
だからメヒコ幼稚園の砂場で一人寂しく砂山を作っている
だって、今夜は何年も話していない従姉から電話があったので
何か、懐かしさと空虚の入り混じった感情で脳が淀んでしまった

新しい年が来て、もう6日も経ったなんてちょっと信じ難いのだ
今年もあと359日しかないと考えるより先に
何か、もう自分が地球にいない気がしてしまう
私は埒外の宇宙人なのかも知れないな
それなのにこれからも年を取って
いずれこの惑星に埋葬されるとは、理不尽な気もする
時々、自分の心臓が鳩だったらいいのになと思う

冷蔵庫のブロッコリーには100年間が詰まっていて、
それが1日で10年ずつ老いて行く
その物語を全部書きとめられればいいんだけど、私には
何故だか20世紀が見えなくて、19世紀末の馬車が映るばかりだ
どうしてだろう、それで街はまだガス灯なんだよ
日暮れ時になると人夫が長い棒で点灯して回る
可哀相なカリフラワーは上海に辿り着く前に、壊疽でね
厚化粧のし過ぎだったのだろう、きれいな脚をしていたけれど
それで、レタスの中ではティンカーベルが死んでいる
偶然にも、やはりきれいな脚をしている
ピーターパンの専属娼婦なんかにあたしゃ興味はないけどね
21世紀の意味は、なに?
2010年って、何よ。


自由詩 新年 Copyright salco 2010-02-18 02:33:51
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