Drive All Night
楽恵

「大事なのは、ギアがガチッ!と切り替わる、あの瞬間」



暗い真夜中の道路、車を走らせていく、
今夜は寝ないかもしれない
光る猫の目のように黄色いヘッドライト、
センターライン追いかけ町を抜け出し高速まで
ギリギリひりひりきりきり滑っていく
結局答えを見つけられない何か、が、ずっと私を焦らせている、
今夜は寝ないかもしれない
満天の星空、気にしない
スピードあげて、
ハンドルを握る手のひらが汗ばんだり乾いたり
流れる窓に灯りが映ったりすれちがったり、バックシートやどこか空いた隙間から失われる。
安全運転のはずが、いつから確信犯に変わって
気づいたらいつも走り続けている
行く先を探しているはずが迷って
誰かが掲げた大切な標識追い越して
アクセル踏み込むタイミングの逃し、いつもブレーキが甘い
でもたぶん
いちばん大事なのは、
ギアがガチッ!と切り替わる、あの瞬間。



明日の事は考えない
考えてもしかたない
今は走っていく
凍える道路にタイヤを熱く転がして
疾走あるのみ
けれど
あなたのことを考える
私の事をまだ何ひとつ知らず、今は一人眠っているあなたのこと



今夜は寝ないことにした、
気がすむまでこのまま
終わりそうにない夜道の先に、待っている
きっと
夜明け前の一番深い時間、あなたの部屋にたどり着く
黒猫のように忍び込む
しばらくあなたの顔を見つめてから
布団にもぐりこみ
まぶたにキスして優しく起しにいくわ、
(おはよう)
(ごめんなさい)
それからメイクラブする
あなたが温めたボンネットのうえで
夜明けまで1マイルの、ドライブをする







自由詩 Drive All Night Copyright 楽恵 2010-01-29 23:01:59
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