ぼくらはキスをした
ふくだわらまんじゅうろう

そうさ
ぼくらはキスをした
みんながもう寝た頃に
電車の終わった線路を歩いて
手をつないで
歩いた道を振り返って
ふたりを遮る
理由のすべてを振り切って
思えばそれが
ぼくらのささやかで
虚しい革命のはじまりだったのかも
しれない
けれど
線路は真っ白で
夜の光が銀色に裏返って
ぼくら
まったくの
裏返った世界にアクロバット
電車なんか
とっくの昔に終わってる
みんな羊の夢をみて
ぼくらを呪いの言葉の下に
だけどぼくらは
手をつないで
六十万年の
夢をかなえて

きみがぼくの夢を破っても
それでもいいのかな
それでもぼくら
愛し合って
手をつないで
どこまで行けるのかな

そうさ
ぼくらは
キスをした
とても生々しい
キスをした
きみの粘膜は濡れすぎていた
ふたりの夜は溶けすぎていた
誰もが寝静まっていた
電車はとうに終わっていた
猫が鉄橋を渡っていた
雲が三日月を跨いでいた
誰かが誰かを愛していた
誰かが誰かを犯していた
誰かが深い深い穴を掘って
そこにぼくらを落とそうとしていた
だけどぼくらは
キスをした
この夜の
すべてが溶けてしまいそうな
宇宙の境界を乗り越えて
ぼくらは
キスを
していた





自由詩 ぼくらはキスをした Copyright ふくだわらまんじゅうろう 2010-01-28 23:28:15
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