スタンバイ
霜天

スタンバイ、夕暮れ。涙はぬるくなり、あな
たは融解する。手遅れになる前に、手を、届
けられぬままに。言葉は無い、書き起こされ
る文章の中で、葉は散るように。ここは、規
則正しく揺れる箱の中だ。スタンバイ、それ
までの時間は。涙はぬるくなり、あなた、は
融解する。掌に顎を乗せ、肘にすべてを預け
て、心音よりも遠い何処かへ、心はより遠く
へ。何を見ようとして、いたのか。スタンバ
イ、走り出す寸前の静寂。私は融解し、涙は
冷める。最近の調子を聞く、全てが回転して
いるらしい。歩くように眠り、また一日を繰
り越す。いつか貯まったら、崩して、手を届
けに行こうと思う。追い掛けて、追い掛けて
いつか掴める、その程度のものであればいい
けど。スタンバイ、朝の風景。あなたは通過
し、涙は緩くなる。振り返りぶつかる視線に
よって、手の届くこの世界が四散すると知っ
ているから。スタンバイ、融解する。手遅れ
になる、あなた、の前に、私の涙が、傾く。


自由詩 スタンバイ Copyright 霜天 2010-01-28 22:19:16
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