単純な物語に回収されてはならない 1
真島正人
たぶん私たちは恐れを忘れてしまった
チェスの駒で現実を語り、物語は日々陳腐になる
弾幕で煙たくなった目は配分する力を失っている
大声で吠えるものたちだけが跋扈して
誇りと情緒不安定を履き違えたまま通勤する
単純な物語は肥大した扁桃腺だ
音に震え音を捻り出す
天使のハープを石に変え、死者の魂を利用して、恥じることすらない
かつて体感した記憶だけが現実であり、体感を勝る事実は無いということを
忘れ果てた人々は
再び古い物語を選択しうる
使い捨てられ、唾を吐きかけられ、あれだけ軽蔑された物語、それは
甘い砂糖菓子のコーティングと英雄譚で補ってあるのだ
私たちの肉体は、神経に縛られている
神経は、私たちに感覚を与える
私たちは留意していながら、忘れている
※
本来、私たちの感覚は、独立を忘れ、回収されることを好む
それは動物の持つ本能の一つだ
私たちは日々無意識に
回収作業を行い、自身大きな渦に回収されることで、安心を得る
私は涙が自然に流れ落ちて止まらない
かつてあれだけ苦しんだのに
かつてあれだけ抗ったのに