小鳥
綾瀬のりこ

小鳥が死んだ。
何の前ぶれも無く突然落ちていた。
鳥が死んだ事に驚いたが
それよりも自分の心が波打たない事に驚いた。
何の感情もわかない。
涙も出ない。

子供の頃から色々な生き物を飼ってきた。
そしてそれが死ぬたびに涙してきた。
育てていた花が枯れたと言っては泣いた。
けれど今は一粒の涙もこぼれない。
小さな鳥の死よりも
明日の仕事の方が大切なのか。
心が乾いてしまったのか。
いつからこんなふうになったのだろう。

小鳥は明日真っ赤な炎で焼かれる。
ごうごうと焼かれて真っ白な骨になったら
死を見つめる事ができるのだろうか。
私の瞳から涙の一粒が落ちるのだろうか。





散文(批評随筆小説等) 小鳥 Copyright 綾瀬のりこ 2010-01-21 20:00:04
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