飛ぶ夢を見た
テシノ

鍵を下ろした扉の前で
不安は芽吹く
膝の裏から
鳥の声を聞いている
まだ鳥の声を聞いている

猛禽類の雄々しさと
水鳥達の優雅さは
月食の前に佇んだ
食われるものが光ではなく
月そのものででもあるかのように
それでもどうかこの世界から
温度が消えてしまわぬように

祈るだけでいいかと尋ねる
生きるだけでいいのかと
扉を開けるのは誰であるかと
入り口なのか出口なのかと
翼があれば羽ばたけるのか
羽ばたかなければならぬのか

膝の裏から芽吹いたものが
地に根を張って扉の向こう
花を咲かすもよいだろう
空には倚らず地面を伝い
種をこぼすもよいだろう
翼をもたずに飛ぶ術ならば
生まれた時に教えた筈だ
揺り篭の上に運んだものは
歌ではなくて歌う喜び

ここまで来たら教えよう
ここまで来たらもう一度
その時にまた教えよう
細く薄まる月明かりにすら
影を作り出す生き物ならば
全てが同じ道を行くのだ
喉が渇けば水を求めて
眠りに就けば永久を求めて
明日になれば道を行くのだ
全てが獣の道を行くのだ


自由詩 飛ぶ夢を見た Copyright テシノ 2010-01-16 18:49:56
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