エア・エア
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肌を、エア。気づくとイラつく太陽は頂上。知らずのぼくらの、ここそこあそこを均等に、均等に照らすのでした。光、光光、だから見えるってさ。記憶って、街中に溶けて流れて固まってつまり建物とか電柱とかそういうの。サラウンドで攻めてきて、だからぼくは手の届く物体としてのきみを。そして気功のような電磁波のような、何らかのふわりを出すきみの手を手を、手を。つかんで、離す。強くして、弱める。ほんとうのことは言わない。数直線は左へ右へ、行ったり来たりのひとり旅だ。
触れる空気がいちばんやさしいと知れば。
肌を、エア。気持ちいいよ。
肌を、エア。「逃げてね」と「おいでよ」の隙間で迂回することばを、着地させては勿体ないと思うのでした。音、音音、だから聞こえないフリ。記憶って、部屋中に滑って逃げ回って通り過ぎるつまり虫とか空気とかそういうの。それならただ、ひとりで話そう。手の届く物体としてのきみへ。きっとぼくらは曖昧なやさしさで動けなくて、不恰好な嘘だらけは、この東京の街角でつきぬけて自由だ。走り方を教わったばかりの人間、ひとり。横断歩道を行き交うひとたちも、もう透明だ。世界を突き抜けるスピードで風景という風景、みんな色だけになれる。
世界を撫でまわすいろんな痕という痕、だれも知る由もない。
はやくはやく。気持ちいいよ。
気づくと。イラつく太陽は頂上で、ぼくらは「逃げてね」と「おいでよ」の隙間で迂回することばを眺めているのでした。光、光光、だから見えるってさ。音、音音、だから聞こえないフリ。肌を、エア。そうして、触れる空気がいちばんやさしいと知れば。