連続する立ち位置
捨て彦
たこ焼き屋のまえで
たこ焼きが出来上がるのをじっと待っているジャリたれは
いつも実存のことばかりに頭を巡らせているので
たこ焼きくるくるするの難しい?
としつこく同じことを尋ねては
店のおばはんを困らせている。
その頃
飲み屋の一番奥の
便所に近い席に
酔いつぶれて突っ伏しているのは
もうわかり合うことのない一人称の僕たち二人。
夜中
誰かの眼鏡が
色とりどりのネオンを次々に発芽させている。
千鳥足の中年が空に羽ばたく時間帯
この詩の語り手は
馴染みのスナックで酒をたらふく飲んで
ママの傷心話に心を痛めている。
地図には載っていない情けない会話の数々
地元の人間の行動をつぶさに観察して
頃合を見計らいつつ
この詩の語り手は
自分のお腹の中にある
やわらかい歯車を
きちきちと回そうとしていた。
街の夜中はとてもさわやかでよろしいなぁ
と
この詩の語り手は胸に手を当てて
その日相手をしてくれる隣の女の人に
優しく微笑みかけている。
しかし驚いたことに
この女の人は
16ビートに
横揺れで対処する人だ。
綺麗な ねいちゃんに道端で声をかけられて
ひょろひょろと情けない感じで
ついていったら
雑居ビルの狭い一室に入れられて
いつのまにか
スーツに茶髪のお兄さんが二人
目の前に座っている。
先ほどから眠たくて仕方がないこの詩の語り手は
朦朧とした意識の中で
これって詩になるんちゃうん
とつぶやきながら
茶髪の怒鳴り声を子守唄にして
テーブルに突っ伏して眠ってしまう。