連続する立ち位置
捨て彦

たこ焼き屋のまえで
たこ焼きが出来上がるのをじっと待っているジャリたれは
いつも実存のことばかりに頭を巡らせているので
たこ焼きくるくるするの難しい?
としつこく同じことを尋ねては
店のおばはんを困らせている。

その頃
飲み屋の一番奥の
便所に近い席に
酔いつぶれて突っ伏しているのは
もうわかり合うことのない一人称の僕たち二人。




夜中
誰かの眼鏡が
色とりどりのネオンを次々に発芽させている。

千鳥足の中年が空に羽ばたく時間帯
この詩の語り手は
馴染みのスナックで酒をたらふく飲んで
ママの傷心話に心を痛めている。

地図には載っていない情けない会話の数々
地元の人間の行動をつぶさに観察して
頃合を見計らいつつ
この詩の語り手は
自分のお腹の中にある
やわらかい歯車を
きちきちと回そうとしていた。

街の夜中はとてもさわやかでよろしいなぁ

この詩の語り手は胸に手を当てて
その日相手をしてくれる隣の女の人に
優しく微笑みかけている。

しかし驚いたことに
この女の人は
16ビートに
横揺れで対処する人だ。




綺麗な ねいちゃんに道端で声をかけられて
ひょろひょろと情けない感じで
ついていったら
雑居ビルの狭い一室に入れられて
いつのまにか
スーツに茶髪のお兄さんが二人
目の前に座っている。

先ほどから眠たくて仕方がないこの詩の語り手は
朦朧とした意識の中で

これって詩になるんちゃうん

とつぶやきながら
茶髪の怒鳴り声を子守唄にして
テーブルに突っ伏して眠ってしまう。





自由詩 連続する立ち位置 Copyright 捨て彦 2004-09-22 23:46:12
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