蝶が、銀河を
吉岡ペペロ

昭和五十年代を

少年だったあのころを

ぼくは大人として生きていた


コンクリート塀のよこをジーパンで歩いていた

煙草とやかんの煙のなかではひとを憎んでいた

駄菓子屋で肉まんを食べながら駅を見つめていた

浄水工事の音のすぐそばでは女が殴られていた

ぼくは少年だった

大人たちの哀しみが

こころのなかで合唱していた


生き方へたくその母は

いまもぼくに

子守唄を聴かせてくれている

だれが悪いわけでもない

あらゆる不幸が

ほんとうはそうではないことを

命を投げ出してでも知らせたかった

昭和五十年代を

少年のぼくが歩いている


(壊れたフィルムが朝日を撮っている)

あ、蝶が、銀河をあがってゆく、

ひとつ、河をこえて、

ふたつ、みつ、記憶をこえて、

蝶が、銀河をあがってゆく、、、

(少年だったあのころを生きている)


昭和五十年代を

少年だったあのころを

ぼくは大人として生きていた


自由詩 蝶が、銀河を Copyright 吉岡ペペロ 2010-01-02 16:46:11
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